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映画・音楽を作る・その他の話。

 図書館用の音響効果


グリン・ジョンズ著 「サウンド・マン」を読み終わった。

サウンド・マン 大物プロデューサーが明かしたロック名盤の誕生秘話

サウンド・マン 大物プロデューサーが明かしたロック名盤の誕生秘話

元々こういうメイキング的なものは大好きなんだけれど
エピソードの面白さや文章の良さで長い本だけれど本当に楽しんで読めた。
改めて読んでみると、グリン・ジョンズというものすごいエンジニア/プロデューサーに
ついて、その作品群として考えたことがあまりなかったアルバムが大量にあった。
持っているもの、聴いたことのあるもの、聴いたことのないもの。
知らないものはほとんどなかったけれど。
本を楽しく読めた原因のひとつは、本を読みながら登場したアルバムを
GPMとかですぐに聴けること。ほとんどのものが聴くことができた。
これが今までだったら、持っているものについてはCD棚を探しにいき、
持っていないものでどうしても確認したければAmazonにオーダー。
翌日までは聴けない。さらにもっと昔だったらレコード店に探しにいかなければならなかった。
それが、音を確認しながら読んでいけることでさらにリアリティがあがっていくのだ。
楽しい経験としか言いようがない。

本の結びで「わたしの身に起きたことを見てごらんよ。」とある。
もちろん彼とはまったく比べものにならないのだけれど、自分の身に起きたことを
考えたりする。
この本の中に登場するスタジオや地名やいろんなものについて、
想像のものではなく、実体験として経験できているものが多数あるし、
ぼくももう27年間も音楽業界で仕事をしてきているのだ。
ライアン・アダムズのセッションの話には友人の名前さえ登場する。

こういう本を読んでいつも思うことは、
みんななんて記憶力がいいんだろうということ。
スケジュールなどに関しては几帳面に手帳をつけていたりだとか
当時の雑誌の記事などから追えるのだろうけれど、レコーディング時の
雰囲気とか会話とか段取りとかよくここまで覚えているなあと。
自分に関していえば、おそらく100枚とか、もしかしたらその倍とかの
レコードに関わってきたはずだし、覚えていることもたくさんあるけれど、
忘れていることや曖昧なことがほとんどのはず。
なんか残念にも思う。そうとういろんな経験をさせてもらってきたのに。
才能が足りないというのはこういうことだ。

ところで、スティーブ・ミラーとの仕事、初プロデュース仕事のくだりの中で
「スタジオが暇な日には、ナグラ製のポータブル・レコーダーを持って外に行き、
図書館用の音響効果を録ってくるように言われたものだった。」という文がある。
図書館用? 
音楽業界のことを書いた本には当然、専門用語やスラングも多い。
ぼくも以前ビートルズ関係の本でそういう言葉の監修などをさせていただいたことがある。
これは「Production music」のことだと思う。Wikipediaには
Production music (also known as stock music or library music) とある。
ようするに、この場合はなにか制作に使えるような効果音をライブラリとして
スタジオにストックしておくために、外に録音に行かされたということだ。
せっかくなので、原文にあたってみた。
I would be sent out with a portable Nagra tape recorder on dead days at the studio and told to record sound effects for the library.
やっぱりそういうことかな。
そういうこともわかるようになったということだ(笑)。
(あ、これは訳の間違いを指摘したいとかではありません。たまたま専門用語に気づいただけ。すごい読みやすい翻訳でした^^)

結びの原文は
Who knows what it will lead to. Look what happened to me.
でした。

元気になるなあ。