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映画・音楽を作る・その他の話。

 メイキング・オブ・ブレードランナー

[rakuten:book:12092184:title]という本を読みました。
イギリスの実在のスパイのことを書いた本。
事実は小説より奇なり、なんて紋切り型もいいところだけれど、
実際には映画や小説に書かれているよりも激しくスパイ活動なんて行われているようだ。
もちろん現代でも。
今は、戦争に勝つためなんてそれほど単純な情報合戦ではないだろうけれど、
いろんな国家間の駆け引き=主に経済的なもの に、スパイ=インテリジェンスは
未だ重要な役割をしているんだろう。平和ぼけの日本国以外は。
前にも書いたけど、CIAなんてめちゃめちゃメジャーな組織で諜報活動が仕事なわけだし、
イギリスにもMI6は実在していて、思いっきりエリートの就職先だ。
(最近は、イラクの情報があまりに貧弱で、一般からもリクルートしているらしい)
日本の防衛省はあんなだし、ほんと先がないな。。。


ブレードランナーの話だ。
今年はこの話ばかりだけれど、やっぱり、深い。
本を読み終わりました。メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナル・カット
メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナルカット
615ページ。オリジナルは1997年に日本訳が出ていて、471ページ。
ずいぶんと大きなアップデートになるけれど、この前買ってきたアメリカ版は
オリジナルの1996年版のまま。新しいDVDセットの話まで載ってるのは
日本版だけなのか?amazon見ても1996版しかないなあ、なんて思ったら、
2007年12月にUK版が出てました。アメリカ人よりイギリス人に人気があるのかな。
でも翻訳の仕事早いなあ。
それだけ、日本にファンが多いってことだろうな。LDなんかも日本のものがコレクションとして
とりあげられてたし。
映画は日本では1982年7月に公開された。
ぼくは高校3年生。たぶんロードショーでは見てないかも。
翌年から札幌で大学生になったわけだけれども、当時の札幌には300円〜800円(2本立て)で見られる
リバイバルの映画館が7、8館あった。ぼくは大学4年間で300くらいの映画をそれらのリバイバル館で
見続けることになるわけだけれど、ブレード・ランナーだけで50回は見てると思う。
そのくらい何度も何度もリバイバルされていたし、(まだレンタルビデオは一般的ではなかった)
バイトもバンドの練習もないときは、朝一から3回続けて見たりした。
当然入れ替え制ではなかった。平和な時代だ。300円とビールとポテトチップで一日を過ごせた。
もう25年がたつのに、古くならないのはなぜか。
安易なデザインやストーリーに頼ってないから、なんてまとめるのは簡単なんだけれど、
きっと、リドリー・スコットになにか奇跡があったんだろう。
完璧主義。そのため、いろんなテイクも発見され、そして今回のボックスになった。
今となっては、作るときから、これはメイキングDVDに入れられるね、なんていう台詞まで
出てきたりするようになってるけれど、興味をそそられるような没テイクがあるなんて、
珍しいことだったのだと思う。
そういった意味ではビートルズにも(それ以外の音楽制作にも)似ているのかもしれない。
原作を書いた フィリップ・K・ディック は1928年生まれ。生きていれば80歳か。
原作の アンドロイドは電気羊の夢を見るか? は 1968年。
ぼくがブレード・ランナーを観まくっていた時代でもけしてSF小説/SF映画のステイタスは高くなかった。
小説は荒唐無稽、映画はさらに子供向けの特撮アクションものみたいな扱われ方かな。
もちろん 2001年宇宙の旅 なんてのもあったけれど、難解としか思われてなかったような気もする。
でも、例えば今 携帯電話にまつわる純文学(死語?)を書いたとしてもあたりまえの素材だけれど
30年前だったら、ふざけた小説と思われたかも。
それがクローンとかネットとかアンドロイドが感情を持つとかなったら、もう相手にされない。
最初にスパイのことを書いたのは、スパイものは小説よりも事実の方が先に行ってたけれど、
SFは小説のほうがずいぶん先にいってたのかも、なんてことを書きたかったからだ。
ディックの再評価も進んでいる。もっとも映画の原作不足に悩むハリウッドが漁ってるだけかもしれないけど。
ブレードランナーでスコットが描いた風景、荒廃していて混雑していて薄汚れていて高層ビルが
林立している風景は、現実のものとなってきている。2019年のロサンゼルス。
風景が映画に追いついてきた。


なんて、難しいこと考えるために、映画みたり、小説読んだりするのは好きじゃないし、
なにか教訓とかメッセージがあるものが好きなわけではない。
きっとうまく説明できなくても「圧倒的な」ものに触れてみたいんだと思う。たぶん。